第5回 外交論文コンテスト結果発表!

外交論文コンテストへの多数のご応募をありがとうございました。
厳正なる審査の結果、入賞者は以下の方々に決まりました。

最優秀賞(賞金5万円)
宇野真佑子 様(東京大学教養学部文科三類二年)
パブリック・ディプロマシーとしての被爆証言の活用

佳作(賞金2万円)
斎藤勇士アレックス 様(松下政経塾第三四期生)
分断し揺れ動く米国政治と日米関係の未来

久野千尋 様(社会人)
世界の食料安全保障の実現に向けた日本の取り組みについて

最終選考作
澤田公徳 様(独法・中小企業基盤整備機構参事)
新たな地域環境ガバナンスの構築に向けた2つのアプローチ

牧野桃子 様(上智大学法学部国際関係法学科三年)
途上国の開発と自由貿易

横田真穂 様(大学生)
平和構築人材育成事業への提言—民軍連携の視点の導入を

【講評】
論文コンテストへのたくさんのご応募に、心よりお礼を申し上げる。審査は編集部による一次審査を経て最終候補に残った作品を各審査員が個別に評価したうえで、その結果を持ち寄り、合議によって入賞作を決定した。最終選考に残った作品は力作が多く、審査員も一つ一つの論文に真剣に向き合った。平均して得点を得た論文もあれば、評価が割れた作品もあり、白熱した審査となった。
 審査の結果、最優秀賞に宇野真佑子氏の論文が選ばれた。宇野論文は米国、ロシア、中国、韓国、ドイツなどの歴史教科書で被爆者証言がどのように記述されているかを丁寧に分析・比較したうえで、証言及び証言者の意図が共有されるためのアプローチを提言した意欲作である。海外の文献を含めた広範なリサーチを行ったうえで一定の提言を行うところに、筆者の努力と創造性を感じ、好感が持てた。分析・提言共にさらに深めることは可能であろうし、そうすることでよりオリジナルな見解が生まれることを期待したい。なお、歴史教科書の記述を対象とした内容は、被爆者証言を外交にどう活用するかというタイトルと乖離があった。掲載に際しては本人の了解を得て、タイトルと一部内容を修正したことをお断りしておきたい(審査は原論文で行った)。
 佳作の二作品も、最優秀賞論文と甲乙つけがたい内容であった。久野論文は、食糧安全保障に関するさまざまな議論を鮮やかに整理し、手堅く提言を導き出したことで、高い評価を得た。ただし、その分記述に新鮮味がやや薄れてしまったのは惜しいところであった。斎藤作品は、自身の米国議会でのインターン経験を基にしたフレッシュな記述に説得力があった。現在の政治情勢を「憎悪の時代」と捉えたのも面白い。他方で提言部分がやや精彩を欠き常識的で、自らの経験と結びついた視点がほしかった。
 最終選考に残った澤田論文は、地域ガバナンスを「環境」というテーマで括った視点と専門性の高い分析に魅力があり、牧野論文は問題の歴史的経緯を丁寧に説明し、横田論文は現代的なテーマに果敢に挑んだ点が評価を得た。
 例年は学生が約八割を占めていたのが、今年度は社会人の方からも投稿も増え、半数弱を占めた。本誌が、読者各層がそれぞれの立場から日本外交を考え、表現する場を求める契機となったのであれば、望外の喜びである。このコンテストが、今後、外交に関心を持つ人々の交流・発信の場として発展していくことを期待したい。(編集部)