巻頭インタビュー
日本外交 転換点の証言
政権中枢からみた「対テロ戦争」と日米関係
福田康夫(元内閣総理大臣)
特集◎カブール陥落の衝撃
アメリカは何と闘ってきたのか
アフガニスタンとイラクを中心とした「対テロ戦争」は、「親米で民主的な近代国家建設」という当初の企図を実現できないままに、終わろうとしている。アメリカはどこで道を誤ったのか。ブッシュ、オバマ、トランプ政権の足跡から読み解く。
中西 寛(京都大学)
鼎談
「タリバンのアフガニスタン」をめぐる戦略地図-統治体制・人権・国際関係
タリバン主導の暫定政権が発足したアフガニスタン。米中や地域大国の思惑が交錯する「十字路」で、包摂的で安定した統治体制を構築できるか。20年にわたる国家建設の蓄積、人権やテロ組織への対応は。和平プロセスに関わるなど現地を熟知した専門家が語る。
青木健太(中東調査会)
東 大作(上智大学)
山根 聡(大阪大学)
タリバンとは何か-アフガニスタン政治文化の中で考える
内戦による混乱から社会秩序の回復を目指し、イスラーム学生たちが結成したタリバン。国内では軍閥・北部同盟との闘争が続き、多種多様なイスラーム思想の流入でポリシーも変化してきた。その系譜をたどり、今後の統治の形を考察する。
登利谷正人(東京外国語大学)
カブール陥落 NATOにとっての不都合な真実
バイデン政権による一方的なアフガニスタンからの米軍撤退は、NATO諸国に動揺を招いた。今後は米欧が独自の戦略を重視するようになるかもしれない。
レイチェル・アルハース(戦略国際問題研究所)
ピエール・マルコス(戦略国際問題研究所)
中央アジア「国際テロ」と「グレートゲーム」の虚実
-アフガニスタン近隣諸国の多様な国益
アフガンに隣接しながら中央アジアは安定を保つ。国際テロが深刻な脅威だった時期は短期間で終わり、9・11後、アメリカとの対テロ協調は長続きしなかった。大国の思惑は現地の国益との一致で初めて実現するもので、タリバン政権再登場後の地域情勢にも多様な国益が絡み合う。
宇山智彦(北海道大学)
外交戦略の転換迫られるインド-南アジア・インド太平洋国際秩序への影響
タリバン政権の成立に、カルザイ・ガニ―政権を支えてきたインドは大きな衝撃を受けている。情勢の変化によるインド外交の戦略転換は、南アジアやインド太平洋の国際秩序にも大きな影響を与えそうだ。
長尾 賢(ハドソン研究所)
東トルキスタン・イスラーム運動とは何か-中国における「反テロ」の論理と新疆政策
中国政府が警戒する、アフガニスタン情勢と「東トルキスタン・イスラーム運動」との連携。謎多き組織の実態を歴史的に紐解きながら、中国の「テロとの戦い」が包含する政治的文脈を明らかにする。
熊倉 潤(法政大学)
外部介入が引き起こした激動の中東国際秩序-イラクを軸に「失敗の歴史」を見る
9・11後の中東の秩序は、近代国民国家形成を狙った、主に米国からの介入と失敗の歴史であり、中東域内のパワーバランスは常に不安定で、宗派対立など新たな紛争の火種を生み続けた。その歴史と、米国の影響縮小後の秩序形成を展望する。
山尾 大(九州大学)
独自ネットワークで存在感高まるカタール
タリバン政権と国際社会をつなぐ「窓口」として、各国首脳や高官が相次いで訪れる-。いま、カタールは世界中から注目される存在である。「過激派」ともつながる広範なネットワークとそれに基づく「全方位」の外交戦略に迫る。
堀拔 功二(日本エネルギー経済研究所中東研究センター)
国際テロ組織の「進化形態」を探る-タリバン、アルカイダ、ISILの成立過程と対処
テロ組織は変貌する。一国内の地下組織から始まり、領域支配する”グローバルカンパニー”に発展すると国家が単独で対処することは至難の業となる。段階を分析し、それを踏まえた対処が必須だ。
宮坂直史(防衛大学校)
日本政府の対応と今後の教訓 アフガニスタンで何が起きたのか
8月15日にタリバンがカブールを陥落させたことで、日本政府としてアフガニスタンに在留する法人や大使館現地職員などの国外退避が最優先課題となった。そのとき東京で、カブールで、何が起こっていたのか。中東アフリカ局長(当時)として退避ミッションに参画した筆者がその経緯を明らかにする。
髙橋克彦(外務省)
around the world
大統領暗殺と大地震 困難が続くハイチ
山本太一(毎日新聞)
スーダン、バシール前大統領の国際刑事裁判所引き渡しに合意
藤井広重(宇都宮大学)
アルジェリア・モロッコ断行の背景
白谷 望(愛知県立大学)
◎トレンド2021
東京2020を終えて 日本の挑戦は世界に何を伝えたか
新型コロナの世界的な感染拡大が収束しない中で開催されたオリンピック・パラリンピック。「安心・安全」な大会運営はもちろん、それを実現する過程で感じたさまざまな学びや可能性を、世界と共有する大会となった。
志野光子(東京オリンピック・パラリンピック競技大会担当大使)
北京オリンピック開催の二つの「ハードル」
2022冬季北京オリンピックを成功させたい中国。東京大会に感染症対策を学び「完全開催」に威信を賭ける。しかし、オリンピック後に控える中国共産党大会と、「人権問題」によるボイコットの可能性が影を落とす。欧米を主にした国際社会、そして日本はどう対応するか。
峯村健司(朝日新聞)
FOCUS◎パンデミック下の「次の一手」
「パンデミック&ネグレクト」を繰り返すな-ワクチンへの公平なアクセスに向けた国際的展開
途上国にワクチンが届かなければ、パンデミックは終わらない。途上国への村々へとどのように届けるか、先進国による「囲い込み」の回避、ワクチンをめぐる国際分業のあり方-。さまざまなアイディアを生かすためのリーダーシップが問われる。
馬淵俊介(ビル&メリンダ・ゲイツ財団)
江副 聡(外務省)
ワクチンパスポートの可能性と課題-変異株感染拡大のなかで続く模索
個人の感染リスク抑制を電子的に証明するワクチンパスポートが、社会・経済活動の再開を促す手段として、脚光を浴びている。だが個人の健康・医療情報のデータ化の国際標準は。プライバシー保護はどうすべきか。課題は多い。
高坂晶子(日本総合研究所)
世界経済の「コロナ出口戦略」を占う-主要国の金融・財政政策の転換点はどこにある
各国が大規模な政策対応を果敢に打ち出すことで、リーマンショックのような金融危機は避けられている。財政政策を危機対応から経済復興にシフトさせつつ金融緩和策の絞り込みが日程に上るなかで、「通常モード」への軟着陸は、果たしてできるのか。
田中 理(第一生命経済研究所)
東南アジアの感染拡大とサプライチェーン危機
日本が先駆けて東南アジアに構築したグローバル・サプライチェーン(GSC)はコロナ禍で寸断され、自動車業界を中心に世界で生産停止が相次いでいる。GSC強靭化に向けて、模索を続ける「現場」に密着して考える。
助川成也(国士館大学)
連載
数字が語る世界経済31
ニクソン・ショックから50年 ドルを政策のアンカーとする国・地域は38
伊藤さゆり(ニッセイ基礎研究所)
外交極秘解除文書 連載3
1989年・天安門事件と冷戦終結前夜
若月秀和(北海学園大学)
ブックレビュー
伊藤亞聖(東京大学)
いまを読む5冊
評者:
林 裕(福岡大学)
辻上奈美江(上智大学)
>編集後記
イン・アンド・アウト