Vol.77 Jan./Feb. 2023

Vol_77_Hyoshi特別対談
G7広島サミット
改めて「法の支配」を問う-2023年の日本外交を展望する
林 芳正(外務大臣)
中西 寛(京都大学)

特集◎安保戦略は転換する

鼎談
試される日本 どうする北東アジアの抑止と対話
日本を取り巻く安全保障環境は悪化している。ウクライナ戦争のグローバルな影響はもとより、西太平洋においては、通常戦略で中国優位の状況が生まれている。厳しい軍事の現実を直視しつつ、安保三文書を改定した日本の覚悟を問う。
            阪田恭代(神田外語大学)
             杉浦康之(防衛研究所)
             村野 将(ハドソン研究所)

ルール基盤の国際秩序を守る決意-安全保障新戦略の意義と実効性を考える
かつてないパワーバランスの変化のなか、「ルールを基盤とする国際秩序を守る」ことを最優先とし、それが国を守る大前提であるとして、国際秩序と国防を相互補完関係に位置付けた。安保三文書の画期はそこにある。実効性はどうか。
神谷万丈(防衛大学校)

さらに深化し拡大する日米同盟
一月、日米首脳会議と日米「2+2」が開催された。三文書改訂のプロセスは米戦略文書改訂と密接に連動し、改定後の動きは、安全保障環境の悪化を反映している。これら日米政策担当者の動きや考えを追い、さらに緊密化する日米同盟や周辺国との協調を考える。
辰巳由紀(スティムソン・センター)

日米協力がはらむ4つの障害-アメリカ戦略文書を読む
2022年10月、バイデン政権が発表した国家安全保障戦略。中国を最大の懸念対象とし、インド太平洋を重視する内容は、日本の安全保障認識とも重なる。しかしそのアプローチをめぐっては、日米間に明確な相違がある。民主主義、貿易、ナラティヴ、防衛費の4つの論点から、対立の構図と克服への道筋を考える。
ザック・クーパー(アメリカン・エンタープライズ研究所)

NATO「新戦略概念」とインド太平洋
NATOの新戦略概念はロシアを「脅威」としていたが、クリミア併合、ウクライナ侵攻を契機に妥協を許さぬ「前方防衛」策に変容している。一方で、「体制上の挑戦」とした中国への対応やインド太平洋戦略は、関与のあり方からの構築が必要だ。
鶴岡路人(慶應義塾大学)

インド太平洋の大義に息を吹き返した日米韓連携
停滞していた日米韓三ヵ国連携が動き出した。三ヵ国合同訓練や情報共有、経済安全保障分野などで連携は加速、今後は防衛産業協力にも期待がかかる。協力関係の「復元力」はいかにして生まれたのか。今後どのような進展が見込まれるのかを探る。
石田智範(防衛研究所)

北朝鮮 核兵器開発と内政引き締め続く-朝鮮労働党中央委員会第8期第6回全員会議から
核兵器開発とICBM開発を進め、核ドクトリンにより「核強国」を目指す一方、内政ではプロセス重視と取れる手法を取り入れる。従来型経済政策と引き締めの両者を使いつつ、金正恩政権は「難局」を乗り切ろうとしている。
礒﨑敦仁(慶應義塾大学)

インド外交を悩ませる中国-伝統的バランス外交は変わるか
陸上国境において、インド洋において、そしてユーラシアという空間において、インド外交は中国と衝突し、懸案を抱えている。現状変更を辞さない中国の存在は、全方位にバランスを重視するインド外交の伝統的なスタイルを変えつつある。
ジャガンナート・パンダ(スウェーデン安全保障開発政策研究所)

サイバー安全保障における先端技術保護-アクティブ・サイバー・ディフェンスの現在
安全保障の大きな脅威であるサーバー攻撃対策は、受け身一方から能動的行動へ進化している。相手を逆探知し、技術・経済・訴追コストを賦課することで抑止を狙うACDとは何か。日本における本格導入の課題を探る。
大澤 淳(中曽根平和研究所)

経済安全保障と日本企業の対中ビジネス
中国を念頭にした表現が目立つ安全保障三文書。機微技術の貿易をめぐって米中が対立するなか、日系企業は情報管理をはじめ難しい舵取りを迫られる。三文書に基づく法規制や中国の反応がどのように現れるのか、日系企業のリスク管理が問われる。
髙見澤 学(日中経済協会)

◎around the world

国連安保理・非常任理事国日本の役割
隅 俊之(毎日新聞)

FOCUS◎侵攻から1年 展望なきウクライナ戦争

ロシアによるウクライナ侵攻は欧州に何を問うたか
関係国それぞれが相手の意図を読み違えるなかで生じたロシアによるウクライナ侵攻。そのプロセスで生じた相互不信は深く、戦争が早期に終結する可能性は低い。さらにいつか訪れる「戦後」において、再びロシアを包摂した秩序を構築できるかも不透明だ。ウクライナでの戦争から、欧州像の現在と未来を考える。
東野篤子(筑波大学)

攻勢の応酬続くウクライナの冬
伊藤嘉彦(拓殖大学)

孤立化するロシア外交の隘路
ウクライナ侵略を機に、ロシア外交のありようは大きく変わった。欧米との関係断絶はもちろん、旧ソ連諸国との結びつきはほどけ、中国、北朝鮮、イランといった現状変更勢力との関係が深まっている。外交空間の変容プロセスを追いながら、ロシアの国際的孤立の実態を読み解く。
廣瀬陽子(慶應義塾)

ウクライナの士気はなぜ挫けないのか
「戦争は一年ではなく九年続いている」。ウクライナ国民の高い抗戦意識の底流にはクリミア占領以来の根強いロシアへの不信がある。占領地の市民の考えは、ゼレンスキー政権の情報戦略は。今後の展開をキーウから考える。
平野高志(ウクインフォルム通信)

アメリカはどこまでウクライナを支えるか
12月、ゼレンスキー大統領は訪米、議会演説で上下両院の議員たちにさらなる支援を直接訴えた。議会は上下院がねじれ、共和党の力が増したものの、当面は党派を超えた支援が続いている。しかし、選挙民を無視はできない。世論の動向はどうか、議会と立法の仕組みは。抗戦の「命綱」を考える。
中林美恵子(早稲田大学)

◎トレンド2023

クーデター計画の底流とドイツ社会の理想と現実
2022年暮れ、世界に衝撃を与えたクーデター計画。加わった現役裁判官、元軍人・警察官らは何を思ったのか。コロナの行動制限などの国家介入が統治意識を崩し、反ワクチン派などのエコーチェンバーが分断を増幅する。ウクライナ支援・エネルギー問題にも悩むドイツはどこへ。
森井裕一(東京大学)

中国ゼロ・コロナ政策撤廃と「白紙運動」
ゼロ・コロナ政策の緩和は予定されており、白紙運動がそれを動かしたわけではなかった。だが緩和をめぐって中央と地方の齟齬が明らかに。加えて中国経済の減速も見えてくるなか、国民と共産党の「社会契約」が焦点となりうる。
津上俊哉(日本国際問題研究所)

台湾統一地方選
民進党の敗北と次期総統選挙の構図
民進党の大敗に終わった台湾統一地方選。コロナ防疫などへの国際的評価を背景に安定的な統治を続けた民進党に「緩み」が生じた結果だ。一年後の総統選に向けて動き出した政局を、国民党、第3勢力の動向も踏まえて展望する。
石原忠浩(台湾・国立政治大学)

イラン 自由を求める国民の闘い
昨年9月、ヒジャブの着用をめぐり拘束された女性の死に端を発したイラン国民の抗議運動は、瞬く間に全国に広がった。背景には、「イスラーム体制の原理原則」に拘泥し、国民の自由の希求や経済的苦境に効果的対応を打ち出せない硬直した政治体制そのものへの不信がある。
坂梨 祥(日本エネルギー経済研究所中東研究センター)

ロンドン条約・議定書と福島原発「ALPS処理水」問題
今年実施予定の福島原発事故処理水の海洋放出に、海洋投棄規制のロンドン条約・議定書の締約国会合と遵守グループ会合では、韓国や環境団体から規制を求める強い意見が出て激しい議論となった。海洋放出は規制対象なのか。遵守グループ副議長が論ずる。
岡松暁子(法政大学)

追悼 江沢民元中国共産党総書記・国家主席
大使として接した社交的指導者の実像
谷野作太郎(元駐中国大使)

連載

インフォメーション

駐日大使は語る6
400年の歴史が培った日本とメキシコの絆と協力
駐日大使は、各国の正式代表として日本に常駐する唯一の存在。大使の目に、日本外交はどう映るのか。メキシコの外交原則、核問題、日墨協力など多岐にわたってプリーア大使に聞いた。
メルバ・プリーア(駐日メキシコ合衆国大使)

外交極秘解除文書 連載10
湾岸危機 人質解放をめぐる攻防(下)-「シニア・ステーツマン」中曽根の面目躍如
山口 航(帝京大学)

ブックレビュー
高橋和宏(法政大学)

いまを読む5冊
戦後秩序を考える5冊
藤山一樹(大阪大学)

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編集後記

イン・アンド・アウト