Vol79 May/Jun. 2023

Vol.79_Hyoushi2特集◎G7広島サミット その歴史的意義

途上国・新興国と連帯した秩序構築を
継続的なウクライナ支援に向けて、途上国・新興国の支持と協力をどう引き出すか-。G7が直面する課題は、どの国とも対等な目線で向き合ってきた日本だからこそ主導できる。サミットの成果を踏まえ、日本の「次の一手」を展望する。
北岡伸一(東京大学)

「対面外交」生かした議長国・日本-影の主役はグローバル・サウス
核兵器のない世界へ、そして国際秩序立て直しへの決意。グローバル・サウスを含めた、価値観の違う国々を糾合するキーワード、それは民主主義ではなく「法の支配」だった。幻となった「G7和平声明」案も飛び出したサミット。会場で取材した筆者が、対面外交の息遣いを伝える。
            飯塚恵子(読売新聞)

核問題を広島で考える
被爆地「ヒロシマ」の核廃絶への願いと、ウクライナの厳しい現実。両者を踏まえて、「広島ビジョン」は核問題を正面から論じた。そのビジョンは「ヒロシマ」に何を語るか。広島の未来にどんな祈りを込めたか。
三山秀昭(広島テレビ顧問)

※17頁下段後ろから二行目において、編集部の校正に誤りがありました。
(誤)一九九一年 (正)一九九二年
修正版をアップいたします。筆者および読者の皆様にお詫び申し上げます。

欧米間で垣間見えた対中認識の温度差
G7が「西側の結束」のみに拠って立つ時代は終わった。ウクライナ支援、中国との関係、地球規模課題など、多様な課題を解決していくためには、アメリカ主導の「対立と競争」から、欧州流の協調的な外交への転換が求められる。
吉田徹(同志社大学)

G7サミット 世界はどう見る
ロシア
「G」の枠組みと決別し抱くビジョン
大前仁(毎日新聞)

中国
「責任ある大国」突きつけられたジレンマ
竹内誠一郎(読売新聞)

台湾
支援の「波」を起こし続けられるか
石田耕一郎(朝日新聞)

韓国
尹外交の「狙い」が達成されたサミット
青木良行(NHK)

インド
広島でも貫いた「したたか外交」
浅野友美(読売新聞)

インドネシア
大きな期待、乏しい実感
地曳航也(日本経済新聞)

ブラジル
ルーラ大統領、G7の「ワナ」にはまる
宮本英威(日本経済新聞)

FOCUS◎ウクライナ戦争は周辺国をどう変えたか

ウクライナ戦争で「凋落」する欧州
冷戦終結後、欧州が主導した地域の平和と安定は脆くも崩れた。ロシアのウクライナ侵攻とその後の戦闘拡大を防げなかったことで、欧州の存在感は大きく後退している。しかし無力ではない。ウクライナ支援のための結束を維持するなかで、新たな役割を見出せるか。
東野篤子(筑波大学)

欧州東方シフトで存在感増すポーランド
対ウクライナ支援の最前線として注目を浴びるポーランド。積極的な関与政策の実像とその背景を踏まえ、その対外関係の変化を読み解く。欧州全体の重心が東にシフトするなかで、日本としても対ポーランドおよび中・東欧やバルト地域外交の強化が望まれる。
宮島昭夫(駐ポーランド大使)

フィンランド NATO加入という選択
中立政策で知られるフィンランド。冷戦後は欧米と軍事的連携を深めたが、NATO加入には躊躇していた。その立場を変えたのは、自国の安全保障上の脅威に加え、将来における外交的選択の自由を奪おうとするロシアの姿勢への反発があった。
タピオ・ユントゥネン(タンペレ大学)

「未承認国家沿ドニエストル」を抱えるモルドバ
-ウクライナ侵攻が阻害する和平プロセス
西欧への接近を図るモルドバと、ロシアへのシンパシーの強い沿ドニエストル。未承認国家ながら安定していた同地域に、侵攻のための「回廊」としてロシアが着目する。周辺国「5+2」の枠組みは和平を続けられるか。
松嵜英也(津田塾大学)

孤立から協調へ-トルコ・エルドアン外交の現在地
ロシアとウクライナの仲介者として振る舞うトルコ。最近のエルドアン外交は、2010年代半ばまでの、ダヴトオールによる地域秩序・国際秩序に貢献する全方位外交路線をほうふつさせる。公正発展党政権下のトルコ外交を俯瞰し、その特徴をあぶりだす。
今井宏平(ジェトロ・アジア経済研究所)

独裁を守るためロシアに従属するベラルーシ
ルカシェンコ独裁体制が続くベラルーシ。その振る舞いは国際安全保障の脅威と認識される。苦境のルカシェンコがプーチンに後ろ盾を求めれば、プーチンはベラルーシの編入に向かい、ルカシェンコは「核ボタンの主導権」まで持ち出して抗う。
服部倫卓(北海道大学)

ロシア・ジョージア戦争 欧米「不介入」の教訓
ジョージアが2地方の実効支配を失った「五日間戦争」。ロシアの侵攻と分離地域の固定化を招いたのは欧米諸国の不介入だった。分離独立工作の「成功体験」を得たロシアは、2014年のクリミア、そしてウクライナへと進む。その原点となった「2008年・南オセチア」の教訓を考える。
ダヴィド・ゴギナシュヴィリ(慶應義塾大学)

カザフスタン 戦争と政治改革のジレンマ
ウクライナ侵攻直前の起きた抗議行動をきっかけに、インフレなど侵攻による経済ダメージを被るなか、トカエフ大統領による政治改革が進行中だ。権威主義指導者の政治改革とは何か。カザフスタンの政治過程を詳細に跡づけ、分析する。
東島雅昌(東京大学)

◎around the world

英国CPTPP加盟の戦略的意義
後藤志保子(米ウィルソンセンター)

◎TREND2023

シャトル外交を復活させた日韓首脳の政治決断
韓国政府が旧朝鮮半島出身労働者(いわゆる「徴用工」)問題の「解決案」を発表したことで、日韓関係は改善に向けた一歩を踏み出した。対北朝鮮の脅威認識を基盤としつつ、このメモランダムをどのように維持するか、日韓双方とも、関係を後戻りさせる余裕はない。
箱田哲也(朝日新聞)

対談◎拡大抑止の再強化をめざして
日米韓の安全保障協力は新段階へ
普遍的価値を重視し、対北朝鮮抑止の強化へ-。
韓国・尹政権は外交の基本戦略を転換させた。日韓・米韓・日米韓の枠組みが再活性化する中で、米国の拡大核抑止や経済安全保障をめぐり新たな協力体制のあり方が問われる。
西野純也(慶應義塾大学)
渡部恒雄(笹川平和財団)

蔡英文訪米・その外交戦略と台湾海峡情勢
世界の注目を集めた、蔡英文総統のトランジットを利用しての、国交のない米国訪問。対して中国の反応は、意外に冷静だった。本誌57号で台湾外交の潮流をデータで実証した筆者が、各種データを駆使して、米・台・中最新の動きを読む。
門間理良(拓殖大学)

中米で続く「対台湾外交」の背景
次々に台湾と断交し、中国と国交を開く中米各国。台湾の政治的・経済的働きかけが有効だった。中米各国の民主化と新自由主義の動きが退潮し、資金力に優れる中国の「一本釣り」を招いている。焦る台湾、次の焦点は来年のグアテマラ政権交代だ。
笛田千容(駒澤大学)

いつまで続くミャンマー「膠着状態」
非常事態宣言が延長され、混乱が続く。これらは軍事政権による統制強化ではなく、親軍事政権がコントロールできない事態だからだ。抵抗勢力との膠着状態が続く限り政策変更ではなく、圧力か、実刑を与えるか、外交アプローチも難しい。
中西嘉宏(京都大学)

イラク戦争から20年の中東
イラク戦争の開戦から20年の歳月が流れた。戦争はイラクに、そして中東地域に何を残したか。そして米国主導の冷戦後国際秩序に与えた影響とは。現在の国際秩序の状況を中東の位置から俯瞰し、そこにおける日本の立ち位置を考える。
池内恵(東京大学)

ウクライナ戦争終結に向けた日本の役割
-南スーダン、サウジアラビア、アフガンを訪問して
どんな条件ならウクライナ戦争は終わるのか。領土、戦争犯罪、戦時賠償といった主要な争点を、さまざまな紛争に関わり、和平を仲介してきた筆者が考察する。新興国・途上国の動向も重要で、日本の関与が期待される。
東大作(上智大学)

スーダン民主化革命 挫折の構図-共存した「二つの軍」はなぜ衝突したか
2019年の革命で民主化への展望を開いたスーダン。しかしその帰結は、かつて共にバシール政権を支え、そしてそれを倒した二つの軍事組織の衝突という形で挫折を見た。その対立に至るプロセスを、スーダン現代史を踏まえて読み解く。
飛内悠子(盛岡大学)

連載

駐日大使は語る8
アフリカ全体の開発を牽引 日本・南アフリカ関係のダイナミズム
ルラマ・スマッツ・ンゴニャマ(駐日南アフリカ共和国大使)

外務省だより

Information

外交極秘解除文書11
湾岸戦争で問われた「人的貢献」-海上自衛隊掃海艇海外派遣をめぐって
山口航(帝京大学)

Book Review
大庭三枝(神奈川大学)

著者に聞く
象徴としての米国の核 拡大抑止をめぐるNATOの葛藤
岩間陽子(政策研究大学院大学)

新刊案内

英文目次

編集後記

イン・アンド・アウト