Vol.85 May/Jun. 2024

Vol.85_Hyoshi特集◎過激と過激ぶつかるアメリカ
 
一国主義と国際主義の相剋-分裂するアメリカと日本の役割
多くの指標で他国を凌駕するにもかかわらず、米国の自己認識は「衰退」に向かい、対外関与への消極姿勢が目立つ。その内向き志向のルーツを、二大政党の対外政策思想に分け入って析出するとともに、一国主義を抑えるために日本は何ができるか、提言する。
森聡(慶應義塾大学)

座談会
変わるアメリカ 誰が世界を支えるか
本選挙まで半年を切った大統領選挙。共和党のみならず、左傾化する民主党が政治の分断を深める。変容するアメリカの姿は、国際政治も大きく揺るがす。同盟国の「負担分担」が求められるなかで、国際秩序
            の担い手である日本の役割を問う。
            今井隆(読売新聞)
            兼原信克(同志社大学)
            中林美恵子(早稲田大学)

誰が「MAGA外交」のキーパーソンになるか-トランプ氏の「外交ブレーン」と政策
「第二期とトランプ政権」外交ブレーン候補は誰か、彼らが外交政策にかける思惑は何なのか。現在トランプ氏に近い顔ぶれを総覧し、その主張から政策がどうなるかを展望する。われわれはどんな「衝撃」に備えたらよいのか。
小谷哲男(明海大学)

アメリカ孤立主義の系譜とトランプ共和党の論理
モンロー・ドクトリンの発出から100年。アメリカ外交の孤立主義を象徴する宣言だが、内外の情勢によってその政策的含意は大きく変化し、「大陸主義」や時に「国際主義」の側面さえ持った。トランプまで連なるその変化の動態と条件を探る。
中嶋啓雄(大阪大学)

Z世代はバイデンを見限るか-ガザ対応で浮き彫りになった「ずれ」
全米の大学に広がったイスラエル抗議デモ。Z世代の意思を明確に示した、珍しい機会だ。彼らの「正義」は、リベラルと保守の対立軸を超え、必ずしもバイデン政権を支持するものではない。その感性と行動原理は、大統領選を左右する。
三牧聖子(同志社大学)

インタビュー
NATO国防費二%をめぐる攻防-トランプ要因とロシア要因から欧米関係を読み解く
第一次政権期、トランプ大統領はNATO加盟国にGDP2%の国防費を求めて、激しく対立した。欧州においてトランプ氏への警戒感は今も強いが、ウクライナでの戦争が状況を変えつつある。特栽秩序の風景が変わる中、新たな米欧関係を築けるか。
合六強(二松学舎大学)

「覇権国のダウンスパイラル」に抗う中国-戦略バランスの維持を狙う大国外交
中国の成長を保証する世界経済の伸びが鈍化し、大国間対立の高まりが多極化を妨げる。中国は、悲観的な見通しのもとロシア・欧州と戦略的結びつきを強めようとしている。習近平国家主席の訪欧はその足がかりとなる。
増田雅之(防衛研究所)

インタビュー
「もしトラ」経済三つのポイント
あらゆる輸入品に10%、中国からは60%の高関税…。アメリカ第一主義復活に、国際秩序は再び混乱するか。ドルは堅調、米経済は好調だがインフレ懸念は拭えない。米中対立含めた世界経済への影響は。日本はどうすべきか。
太田智之(みずほリサーチ&テクノロジーズ)

 
FOCUS◎韓国総選挙の捉え方

座談会
総選挙後の韓国と東アジアを展望する
磯崎典世(学習院大学)
阪田恭代(神田外語大学)
箱田哲也(朝日新聞)

北朝鮮 ミサイル開発の現状
活発化する北朝鮮のミサイル開発。その脅威を正しく認識するには、ミサイル開発計画や実際の発射状況を正確に知ることが不可欠だ。ここ数年のミサイル発射を逐一明示し、その動向を確認する。
宮本悟(聖学院大学)

戦争支援に見る北朝鮮の「論理」と「実利」-「新冷戦」ナラティブと「国防新五ヵ年計画」
核・ミサイル実験の「モラトリアム」を解除、ミサイル発射を再開した北朝鮮は、ウクライナ戦争でロシアと軍事協力を深めている。「新冷戦」と称するナラティブは、対南抑止力に加えて世界の核不拡散体制への侵食をもたらしている。
倉田秀也(防衛大学校)

北朝鮮の「研究窃取」は対策できるか-研究インテグリティと安全保障輸出管理から考える
そもそも研究は開放性、透明性がその基盤をなしている。だが機微技術が悪用・軍事利用されるリスクを意識し、責任と倫理のもと管理する必要がある。北朝鮮が研究を通じて技術獲得・窃取を行う事例から、公正な研究への脅威とその対策を考える。
小野純子(外務省)

 
around the world

混乱極まるハイチ情勢
中村聡也(毎日新聞)

習近平を迎えたハンガリー-オルバン政権で継続する「復讐劇」
山本直(日本大学)

 
◎トレンド2024

円安は経済正常化の「号砲」-世界の財政史から見る「超緩和後」の日本
米中対立などのあおりを受けて世界経済は「高インフレ基調」に転換。金利差が拡大しての急激な円安は、むしろ経済がインフレと連動する正常化を示す。今後の課題は日本経済と社会の強靭性だ。
竹森俊平(読売新聞東京本社客員研究員)

イエメン・フーシー派から見たガザ紛争と「抵抗の枢軸」
ガザ紛争の勃発で中東全体の秩序が揺らいでいる。核心はイスラエルとパレスチナの対立だが、その背後で見逃せないのが、非国家主体を含む「抵抗の枢軸」の動向だ。イエメンのフーシー派を中心に、親イラン・反西側ネットワークの思想や行動原理を読み解く。
𠮷田智聡(防衛研究所)

プーチン政権「長期シナリオ」の見逃せない課題
通算5期目をスタートさせたプーチン政権。大統領選挙の圧勝により、国内政治基盤を固めウクライナ戦争も正当化する一方で、戦争と政権の長期化に伴うリスクに不安要素を残す。長期政権への戦略と課題は。
溝口修平(法政大学)

「テロとの戦い」に苦悩するロシア-「イスラーム国ホラサーン州」によるテロの意味
コンサートホール襲撃事件にウクライナの関与を主張するプーチン政権だが、その見立てには疑問符がつく。チェチェンと中央アジアに源流を持つ旧ソ連地域のイスラーム過激派組織の実態とは。ロシアはウクライナと対テロ二正面作戦を遂行できるか。
富樫耕介(同志社大学)

「アフリカの角」不安定化の構図-エチオピア・ソマリランド覚書にみる紅海両岸の地政学
今年一月、港湾を求める内陸国エチオピアと未承認国家ソマリランドが締結したとされる覚書は、両国それぞれの利害を超えて、紅海両岸地域の複雑な国際政治に新たなピースをはめ込むことになった。多様なアクターが交錯する「アフリカの角」の地政学的構図を読む。
遠藤貢(東京大学)

女性・平和・安全保障(WPS)が「複合的危機」の切り札に
提唱から四半世紀を経て脚光を浴びているのは、女性の視点から問題を捉え、解決を促すことが紛争解決の本質に迫るとの認識が広まったからだ。筆者の関与するタイ深南部の事象から説き起こし、世界、そして日本でのWPS深化の意義を考える。
堀場明子(笹川平和財団)

最新OECD論
世界の共通課題に立ち向かう戦略的価値とは
「世界最大のシンクタンク」と称され、かつての「先進国クラブ」から、新興国・途上国を巻き込んだ経済秩序をリードする組織へと変貌したOECD。その先進的な取り組みと日本外交へのインパクトを、日本のマルチ外交を牽引してきた筆者が考察する。
兒玉和夫(元OECD代表部大使)

 
特別インタビュー◎証言 冷戦後の日本外交

日米同盟とアジア外交の共鳴
9・11に始まる「テロとの戦い」と、経済的パワーとしての中国の台頭に象徴される激動の二〇〇〇年代。政権中枢で指揮を執った福田氏に聞く。
福田康夫(元内閣総理大臣)
聞き手 山口航(帝京大学) 小南有紀(日本国際問題研究所)

 
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佐竹知彦(青山学院大学)

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