Vol.72 Mar./Apr. 2022

01_Vol.72_hyoushi号外特別企画◎追悼・中山俊宏先生
アメリカ政治・社会を常に観察し、それを土台に鋭い分析を続けられました中山俊宏先生が急逝されました。追悼の思いを込め、『外交』59号(2020年1月刊)に掲載いたしました「アメリカに社会主義はない?——民主党の『左傾化』をどう考えるか」を公開いたします。(『外交』編集部)(59号〔2020年1月〕収載)

特集◎ウクライナ侵攻の衝撃波

動揺するリベラル国際秩序
ロシアによるウクライナ侵攻は、20世紀に国際社会が積み上げてきたリベラルな国際秩序を動揺させると同時に、冷戦終結後のヨーロッパで構築されてきた信頼醸成プロセスの有効性にも疑問を投げかけた。われわれは再び安定的な秩序を取り戻すことができるか。そのためには何が必要か。
細谷雄一(慶應義塾大学)

犠牲を大きくしたロシア軍戦略転換-侵攻開始からの経過を追う
伊藤嘉彦(拓殖大学)

プーチンの論理、国際社会の衝撃
プーチン大統領の真意はどこにあるのか―。世界が首をかしげるなか、軍事侵攻は続いている。侵攻の背景は。アメリカが情報公開したのはなぜか。各国の制裁はどのような展開につながるのか。俯瞰的観点から侵攻を描き、その影響を考察する。
兵頭慎治(防衛研究所)

対談
ウクライナ侵攻-エスカレーションは止められるか
ウクライナ侵攻は現実化した。国際社会のロシア包囲網に対し、核の使用もちらつかせる。プーチンの抑止は果たして、可能か。
鶴岡路人(慶應義塾大学)
服部倫卓(ロシアNIS貿易会)

「第5の主戦場」サイバー攻撃欧州の脅威
なぜ、ロシアはウクライナのシステムが全面ダウンするような攻撃を避けているのか。「サイバー義勇兵」や複数の国際ハッカー集団の「参戦」がもたらす未曽有の事態とは。陸、回海、空、宇宙に続く「第5の戦闘領域」で戦われるハイブリッド戦、その実態に迫る。
松原実穂子(NTT)

国境の街で見た
ウクライナ難民の苦悩と欧州の選択
ある者は脱出し、ある者は残り、ある者は戻る。ロシアによる軍事侵攻の直後から、ウクライナと国境を接する欧州諸国は難民の受け入れを始めた。市井の人々が直面する苦悩と、迎える欧州諸国の対応を現地からリポートする。
三木幸治(毎日新聞)

超党派で対ロシア制裁を促す米連邦議会
支持率の低迷が続いたバイデン政権は、ウクライナ支援・対ロ制裁で議会からの追い風を受ける。民主・共和両党の協調気運のもと、トランプ支持者はこれで離反するのか。ウクライナ侵攻が中間選挙に与える影響は。
ロバート・トムキン(コングレッショナル・クォータリー)

オリガルヒへの制裁に効果はあるか-プーチン政権を支える新興財閥
ロシアの政治構造に深く関わる経済権力としてのオリガルヒ。その成り立ちと変遷、プーチン政権下での実態を読み解く。彼らに対する西側の経済制裁は、短期的には限定的な効果にとどまりそうだ。
安達祐子(上智大学)

ドイツ・かなぐり捨てた「ためらう覇権主義」-抑止論の復活と「親ロシア」の放棄
2月27日、ショルツ首相は議会下院の演説で、ドイツ連邦軍の増強に1000億ユーロを支出、さらに国防費をGDP2%以上に増額すると表明。冷戦崩壊後の外交・国防政策の大転換となった。その背景を冷戦崩壊にさかのぼって論じる。
三好範英(ジャーナリスト)

国連対ロ非難決議にみる「大陸国家」インドの苦悩
国連におけるインドの行動は、西側諸国の失望を招いた。全方位外交の伝統や、長きにわたるロシアとの友好関係は無視できないが、根底には「インド太平洋」という海洋の視点からは見落とされがちな、「大陸国家」としての厳しい安全保障環境がある。
伊藤 融(防衛大学校)

ウクライナにとって「西欧」とは何か-独立後の外交政策の変遷を手掛かりに
欧米とロシアとの狭間にあるウクライナ。その外交は、両者との微妙なバランスの中で展開されており、常にEUやNATOへの加盟が主要課題であったわけではない。独立後のウクライナ外交の歩みを振り返るとともに、「西欧」に振り切ることになった、2014年の意味を考える。
松嵜英也(津田塾大学)

旧ソ連圏の分離紛争
その歴史とウクライナ侵攻への射程
カラバフ、アブハジア、南オセチア、沿ドニエストル。旧ソ連圏で生じた分離紛争に対して国際社会は、民族自決を尊重しつつ、国境線の変更を回避する解決策を探った。その両立は難しく、現状は解決からは程遠い。しかし分離紛争の放置は、ウクライナ危機にもつながっている。
松里公孝(東京大学)

歴史からみたロシア「勢力圏」の虚実-黒海沿岸地域におけるロシアの影響
帝国時代よりロシアに根強く存在する「勢力圏」の思想。この思考と実態は、むき出しの軍事力だけでなく、進出を支える普遍的理念と、それに何らかの共感を示す内外の人々が存在したことで機能していた。その歴史的展開を追い、2022年を照射する。
黛 秋津(東京大学)

対談・ヨーロッパは国際秩序の担い手たるか(下)
EU版インド太平洋戦略のバージョンアップを
ここ数年、急速にインド太平洋への関与を強めるヨーロッパ。さまざまな領域で時に中国と対峙せざるを得ない状況のなか、各国の個別事情を超え、具体的・効果的な取り組みが求められる。EUはどこまで結束して臨めるか。
合六 強(二松学舎)
東野篤子(筑波大学)

◎連続企画 独立日本の70年

変容するアジアの国際秩序と日本外交(上)
五百旗頭真(兵庫県立大学)

日米安保と基地問題-沖縄返還50年「2項対立」を超えて
「基地と安全の交換」は同盟の原則だが、日本の基地問題は国内問題だ。その原因は日米安全保障条約の条文にある。「誰が同盟のコストを負担するか」という問題を、国内での二項対立的観点から解くのは難しい。
川名晋史(東京工業大学)

around the world

アメリカ連邦最高裁 初の黒人女性判事誕生に向けて
大林啓吾(千葉大学)

マリからの仏軍撤退 拡張型対テロ作戦の限界
吉田 敦(千葉商科大学)

◎トレンド2022

韓国大統領選挙「超・接戦」が示すもの-何が問われ、何がとわれなかったか
韓国国内の「分断」が際立った選挙戦。世代間闘争やジェンダーへのバックラッシュなどが目立ったものの、政治的な振れ幅は小さかった。対北朝鮮政策は、世界情勢を受け不透明だが、日韓関係の前提は変わらないことに注意すべきだ。
澤田克己(毎日新聞)

舵取り役なきグローバルガバナンス
世界同時多発的コロナパンデミックに対する国際協調は、自国対策優先の風潮の前に不調である。感染防止策緩和が新たな格差を生む可能性があり、コロナ対策でも「多様化」する世界の保健協力が重要になるなか、さらなる日本の貢献が求められる。
詫摩佳代(東京都立大学)

習近平体制三期目を見据えた中国全人代報告
習体制2期目を締めくくる全人代。政府活動報告では、経済の安定が強調され、2022年「5.5%」成長を実現すべく財政・金融を積極的に動員する構えだ。習・3期目の順調な離陸は経済にかかっている。
箱崎 大(ジェトロ・アジア経済研究所)

RAAで深まる日豪安全保障協力-インド太平洋の安定に果たす役割
今年一月に署名された日豪RAAにみられるように、両国の安全保障面での協力が進んでいる。インド太平洋の安定化に資する役割を加えて、将来的な日本の安全保障協力のモデルにもなりうる。
永野隆行(獨協大学)

トンガ火山噴火・津波災害への日本の支援
大規模な火山噴火によって甚大な被害を被ったトンガ。共に災害大国として長年協力関係を築いてきた日本は迅速な支援を行った。人道的見地はもとより、「自由で開かれたインド太平洋」の実現には、大災害への対応や連携も重要な意味を持つ。
山本英昭(外務省)

連載

駐日大使は語る2
インド太平洋の平和と繁栄 日・インドネシア関係が貢献
ヘリ・アフマディ(駐日インドネシア共和国大使)

外交極秘解除文書6
復帰50年 沖縄「核抜き・本土並み」返還への道程
佐藤首相を動かした政治ブレーン(上)
中島琢磨(九州大学)

数字が語る世界経済34
世界の外貨準備に占める人民元のシェアは2.7%(2021年9月末)
伊藤信悟(国際経済研究所)

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ブックレビュー
選評:伊藤亜聖(東京大学)

いまを読む5冊
評者:
油本真理(法政大学)
崔慶原(常葉大学)

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編集後記

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