座談会
ハマス・イスラエルと世界の「アポリア」
パレスチナ問題はなぜ置き去りにされたのか、攻撃に欧米諸国がうまく対応できないのはなぜか、この紛争の解はないのか(アポリア)。パレスチナ問題を理解する「三つの枠組み」から中東研究のエキスパートが読み解く。
末近浩太(立命館大学)
立山良司(防衛大学校)
錦田愛子(慶應義塾大学)
イスラエルの軍事的ポテンシャル
たった一日の攻撃で、かつてない一二〇〇人の死者。イスラエル社会・国家を震撼させたハマス攻撃は、国防軍の伝統的な軍事構想に大きな転換を迫った。空軍力、予備役を充実させてきた臨戦国家は、どこまで持ちこたえることができるのか。
池田明史(東洋英和女学院大学)
現地報告
止まらない憎悪と暴力の連鎖
三木幸治(毎日新聞)
特集◎躍動するASEANそして日本
「安定と統合」から戦略的自立の模索へ
対立の地であった東南アジアに、政治的安定と、統合による繁栄をもたらしたASEAN。しかしその発展を支えた国際環境は崩れ、ASEANは今、内外から突き付けられた試練に直面している。困難の中でどのように独自性を発揮できるか。改めてその存在意義を問う。
大庭三枝(神奈川大学)
日本とASEAN 信頼の歴史、共に創る未来
今年、友好協力50周年を迎えるASEANと日本。半世紀を経てその関係は水平的かつ戦略的なものへと変わってきた。地域秩序を共に担うパートナーとして、次の50年をどう展望するか。ASEAN代表部大使が語る。
紀谷昌彦(ASEAN代表部大使)
座談会
したたかなASEAN 結束への求心力と遠心力-求められる日本の認識変化
経済、安全保障、人権・民主主義などの課題に直面しながらも、成長センターとして日々変化を遂げるASEAN。その実像を読み解きながら、日本の対ASEAN外交に欠けた視点を考察する。
石井正文(学習院大学)
浜中慎太郎(ジェトロ・アジア経済研究所)
𠮷岡桂子(コルヴィヌス大学)
中国はどれほど大きく見えるのか-東南アジア諸国の中国観を分析する
首脳同士の関係を重視し、援助によって指導者個人のニーズにも応える。国際秩序に向き合うアイデアの提供も含めて、ASEAN諸国での中国の存在感は巨大になったが、その特性と徳性に、意外な評価があることも浮かぶ。
鈴木絢女(同志社大学)
フィリピンの視点
南シナ海領有権問題における「ASEAN流」の限界
2016年の仲裁裁判所判断にも関わらず、南シナ海も島々の領有権問題は、中国優位に進もうとしている。なぜASEANは中国に対して有効な対応をとれなかったのか。行動規範をめぐる交渉を振り返りながら読み解く。
レナート・デ・カストロ(比デ・ラサール大学)
ASEANの人権-「アジア的」からの脱却
ASEAN諸国の人権保障の取り組みの遅れは、人権が世界的に「経済マター」に発展したことによって目立った進展が見られる。その背景には地道な努力もあった。ASEANに多くのパートナーを持つ、日本政府と日本企業が果たすべき役割とは。
山田美和(ジェトロ・アジア経済研究所)
信頼を積み重ねた日越外交50年
ベトナム戦争後の復興に日本は尽くし、主に経済的協力関係を強化してきたが、教育交流や政治家の交流が活発だったことも緊密な両国関係をつくる要因となった。「戦略的パートナーシップ」は今後どう発展するのか。
古田元夫(日越大学)
ASEANはサプライチェーンを担えるか
中国との「デリスキリング」やコロナ禍でのサプライチェーン見直しで脚光を浴びるASEAN。だが、垂直・水平統合に適合した古い産業構造と、不安定な政治状況は、いまや高リスクとなる。日本湖業もまた、グローバル化への意識が必須である。
後藤康浩(亜細亜大学)
存在感増すASEAN諸国の人材 日本は国際化が急務
ASEAN諸国の人材レベルを日本企業は正しく評価できていない。難民や技能自習生など多くの外国人在を迎えるサンテックは、あるべき未来を考え、体現している。
青木大海(株式会社サンテック)
FOCUS◎日米韓再結束の射程
キャンプデービット会談 日米韓協力の「制度化」と次なる課題
安全保障問題を中心に幅広い分野で関係強化を確認し、対話の枠組みを制度化させた三ヵ国。次なる課題は、有事を見据えた安全保障協力の進展、重層的な政治対話の促進、そして国内情勢に左右されにくい強靭な紐帯の構築だろう。
秋田浩之(日本経済新聞)
西野純也(慶應義塾大学)
韓国から見た韓米日関係深化の条件-インド太平洋における韓日連携の可能性
キャンプデービッド会談後の韓米日協力の行方は、韓日両国の連携がどこまで進むかにかかっている。信頼関係回復のための取り組みや経済安全保障など、具体的な論点を提示しながら、インド太平洋を意識した新しい関係の構築へ、その道筋を示す。
陳昌洙(世宗研究所)
◎トレンド2023
一年ぶりの米中・日中首脳会談-「対話による安定」への模索が始まった
長期的な競争関係にある米中だが、それを衝突に至らせないためには、対話の枠組みを構築することが不可欠だ。米中・日中首脳会談の最大の意義は、そのモメンタムを生み出そうとする姿勢にある。
高原明生(東京大学)
プーチン大統領訪中と中ロ「逆転」の歴史的位相
ウクライナ戦争でいっそう関係の緊密化が進むロシアと中国だが、その力関係は中国優位に大きく変わっている。第2次大戦後、協調と対立が複雑に織りなす両国関係を踏まえ、現在の「戦略的パートナーシップ」関係のありようを読み解く。
石井明(東京大学)
ナゴルノ・カラバフ紛争「終結」の構図-未承認国家が国際社会に突きつけるもの
30年以上の地域紛争が、たった一日で終結した。そこには、当事国のアルメニアとアゼルバイジャンをめぐる、国際関係の大きな変化が影響していた。ウクライナ紛争、イスラエル・パレスチナ情勢など、世界を揺るがす事件の基底に、未承認国家問題が横たわる。
廣瀬陽子(慶應義塾大学)
ドイツ政治 大転換の成果とリスク
ロシアによるウクライナ侵攻は、ドイツ政治を大きく変えた。紛争国への武器輸出、エネルギーの脱ロシア依存、中国への警戒感の高まりなど、ショルツ連立政権が進めた政策転換の歩みを振り返りつつ、ウクライナでの戦闘長期化で顕在化しつつあるリスクを読み解く。
柳秀直(駐ドイツ大使)
G20後のインド・カナダ対立-モディ政権下で加速する「アイデンティティの政治」の危うさ
六月にバンクーバー郊外で起きたシーク教指導者の殺害事件は、インド・カナダ両国が外交団を追放しあう事態となった。シーク教徒の歴史、移民「受け入れ国」と「送り出し国」との関係、ナショナリズムの動員などの観点から、インド政治の現状を読み解く。
竹中千春(立教大学)
追悼・李克強 前中国国務院総理
親民的なリーダーが遺したもの
徳地立人(アジア・パシフィック・イニシアティブ)
証言◎冷戦後の日本外交
日本外交の地平を広げる(上)-「米国一本足打法」から「自由と繁栄の弧」へ
谷内正太郎(元外務事務次官)
聞き手:山口航(帝京大学)
連載
Information
外交極秘解除文書13
非軍事国際貢献の到達点 1988年 国際協力構想の誕生
-村田次官・栗山外務審議官の危機感とリーダーシップ
武田悠(広島市立大学)
ブックレビュー:高坂正堯『歴史としての二十世紀』
田所昌幸(国際大学)
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英文目次
編集後記
イン・アンド・アウト